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日本初の女性だけの造園コンテスト
いずみガーデンのペア堂々の準優勝
国内で初めて開催された女性造園技術者だけの技能大会で、いずみガーデン(和泉政義社長・市内東旭川町下兵村467)のチームが堂々の準優勝に輝いた。長野県松本市で開かれた大会には全国から9チーム(2人1組)が出場。いずみガーデンチームが掲げたコンセプト「自然の命に触れる、福祉の庭」とともに、その構想を実現した技術とデザイン性が高く評価された。
2日間、9時間で「庭」を
造園の世界で仕事をしている女性技術者だけを対象にした初めての大会は、信州花フェスタ(4/25~6/16)のメインイベントの一つとして、4/27,28に開かれた。
同じ材料を使い、2日間で9時間の制限時間内に、テーマ性を持った「庭づくり」に挑み、その技とデザイン性を競うというコンテスト。いずみガーデンのチームは、同社で設計部長を務める和泉玲美さん(38)と関連会社(名古屋)の技能士・藤川純奈さん(30)のペア。和泉さんと藤川さんが一緒に仕事をするのは初めてのこと。大会を前に、藤川さんが旭川にやってきて4日間、和泉さんの描いたデッサンをもとに作業の工程や役割分担などを綿密に打ち合わせた。
自身の経験をコンセプトに
チームが掲げたコンセプト「自然の命に触れる、福祉の庭」は、和泉さん自身の経験がもとになっている。
「昨年、長女を出産した後に、ホルモンのバランスが崩れて産後鬱になりました。社会から分離された感覚に陥り、泣き続けて苦しい日々でした。あの時、カーテンの隙間から、もし木が1本見えていたら、そこに自然を感じられる庭があったら、きっと気持ちが違っていただろうと、今でも思います。私の辛かった経験は2週間でしたが、もっと長期的に動けない身体だったら、と考えたことがきっかけで、車いすを使っている人や、ストレッチャーに横たわっている人が、草や木や花を間近に感じ、手で触れられる庭を考えてみようと思ったんです」
与えられる材料は、焼き丸太、竹、庭石、レンガ2色、樹木(ツバキ、モミジ、ツツジ)など。幅4メートル、奥行き3メートルの面積の中に、9時間以内で、掲げたコンセプトの庭を造り上げる。
米国ホスピスの日本庭園
和泉さんは、短大の造園林学科を卒業した後、由仁町や北広島市の造園会社で現場で仕事をしながら、冬はニュージーランドに渡り、住宅の庭のメンテナンスなどを手掛けた。花の勉強を始めたのもニュージーランドで。その後、石狩市の会社で7年間、公共施設の統括管理者として働き、冬の間は静岡県の会社で松のせん定など日本庭園の修行をした。そして、就労ビザを取得して米国へ。オレゴン州ポートランドに本社がある造園会社の社員として3年間、サンフランシスコやニューヨークなど全米を飛び回り、住宅や病院などの日本庭園づくりや管理の仕事をした。
米国に滞在中、ホスピスにつくられた日本庭園で仕事をしていた和泉さんは、白血病の患者が外に出て来て、しばらく庭の風景を眺め、穏やかな表情になって戻っていく姿を何度か目にした。「日本庭園には、病んだ人の心を癒す力があるんだと実感しました。」と振り返る。
大会に向けて、和泉さんが制作したデッサンには、車いすの人が、竹のゲートに迎えられる姿、ストレッチャーに横たわる人が触れられる高さの植栽、車いすから移りやすい高さや構造の芝生、車いすのまま植込みができる高さの、自然素材でできた花壇のイメージが、丁寧に描きこまれている。
北海道から「癒しの庭」発信を
2日間に渡る大会では、構想・コンセプト、造園の技術、竹や木や石の扱い方だけでなく、足元をきれいに掃除しながら作業しているかなど、職人としての技量・資質なども厳しく審査される。結果は、現在の造園業界のトレンドの1つ「しっぽのある家族×庭」が金賞、次いでいずみガーデンのチームが「銀賞」を獲得した。
和泉さんは、今回の“銀メダル”は、造園の世界の流れを示していると感じている。洋風のガーデニングは全盛だが、日本庭園は「庭じまい」の対象となってしまっている。
「アメリカでは、病院に日本庭園があって、その庭を活用してホテルができて、その周辺に次第に住宅街が広がっていく事例があるほど。日本庭園はそれほど癒しの力があるんです。日本でも、病院はもちろん、急激に増えている福祉施設に小さくてもいいから日本庭園があれば、入所している人やそこで働く人たちにとって、どれほどの癒しになるでしょう。本州に比べて、歴史が浅い北海道は造園の技術では劣っている面もあると思います。でもだからこそ、高齢化が進む今の時代に、北海道から癒しのための庭づくりを発信していきたい、行けるのではないか、そう思うんです」と和泉さんは話す。